シューベルト未完成


シューベルト:交響曲第7番 ロ短調 「未完成」

1797年、ウィーンに生を受けたシューベルトは音楽を愛好する学校長の父のもと、ヴァイオリンと音楽基礎教育を受けます、11歳でウィーン宮廷児童合唱団に入るとともに、学生オーケストラでコンサートマスターとして活躍、やがて当時の宮廷学長サリエリに師事します。13歳頃より作曲も始め、ピアノや弦楽四重奏、管弦楽、オペラ等多くの作品を生みだしていきます。また31歳で生涯を閉じるまで約600曲の歌曲を残しています。交響曲は16歳で自身の所属するオーケストラのため作曲したものが最初。交響曲第7番は25歳の時(作曲動機はある音楽協会の名誉会員に迎えられる返礼とされています。)第1から第3楽章最初まで作曲して中断。自筆譜が40数年後に彼の知人宅より発見され初演されました。なぜ未完成のまま?どうして放置された?など謎のままです。 第1楽章はソナタ形式。冒頭で深遠へと誘われる印象的な統一主題が低弦によって奏されます。弦の序奏に続き、木管によって伸びやかに第1主題が歌われます。やがて民謡風のやや明るい第2主題がチェロによって奏され、音楽が紡がれていきます。展開部でも統一主題が主要な要素として組み立てられ、やがて激昂した表現へと高揚をみせます。再度主題が再現されると深い情感をたたえながら終えます。 第2楽章は歌謡的な美しさに微妙な転調を伴いつつ、憧れに満ちたシューベルト想いが歌われ、音楽史上最美の音楽が創造されていきます。音楽は高まりをみせ巨大な展開部を形作りますが、再現部を経て静かに天上の世界へと昇華されていきます。 この時期は彼の人生の転換期にあたります。特に作曲にとりかかる直前に発症した病気(梅毒)は、自身の将来や人生を考える上で大きな影響を及ぼしたことは想像に難くありません。そのような中生み出されたこの交響曲は未完ながら驚くべき傑作として後世に残りました。