シベリウス:交響曲第1番 ホ短調 作品39
少年時代ヴァイオリンに、ついで室内楽に熱中したシベリウスはベルリン、ウィーンで留学でドイツ様式の堅固な作曲法を学ぶとともに、チャイコフスキーの悲愴、特にベルリオーズの幻想交響曲を聴いて感銘を受け、交響曲作曲への強い動機を得ていました。そして19世紀末祖国フィンランドがロシアとの緊張高めるとともに愛国運動の燃え盛り、自身も生まれ育った民族音楽をもとにフィンランディアを初めとした交響詩を世に出し、フィンランド随一の作曲家として歩みを進めていました。その結実として1899年に交響曲第1番を作曲しました。終楽章に自身が「幻想曲風に」と記しているように、交響曲という形式ながら北欧独特の色彩を帯びた交響詩的作品であり、ファンタジックな世界が展開します。 第1楽章はクラリネットが哀愁と憧れを秘めた旋律を歌います。この主題をもとに音楽は発展していきます。突然第2ヴァイオリンが刻み始め、続いて残る弦楽器が広がりのある第1主題を提示します。一旦収まるとハープの伴奏にフルートが可愛く副主題を奏でた後、オーボエがゆたかに第2主題を提示します。展開部は主題が幻想的色彩を帯びてすすみ、再現部を経た後に金管楽器による重々しい響きに応えた後に曲は終えます。 第2楽章はヴァイオリンとチェロで民謡調で抒情的な第1主題が歌われます。木管によりカノン的にすすみ全合奏でクライマックスをつくります。落ち着いてチェロ独奏で少し回想すると、ホルンにより表情優しく新しい主題を奏します。ハープの美しい伴奏に乗り音楽がすすんだ後に主題が再現され、やがて活発かつ精力的に展開していきます。ふたたび平穏な中、安らぐように主題が戻り終えます。 第3楽章は熱狂的かつ粗野なスケルツォです。荒いピチカートに粗野な主題がヴァイオリン主導で奏され木管に受け継がれると、軽やかな第2主題がヴィオラ主導で現れます。管弦の応答が少しコミカルに奏された後に、フーガ風の技巧的な木管の応酬へといたります。トリオ部分ではホルンの伸びやかな牧歌が奏され、フルートが対旋律を歌い幻想的です。再度スケルツォに復帰し狂乱のまま曲は終えます。
第4楽章は幻想曲風にという指定の通り自由な楽想です。まず第1楽章冒頭の主題が悲劇的かつ熱量をもって歌われます。やがてフルートにより慰めをもって旋律が奏され、次には決然と語りがはじまりアレグロ主部へと導かれます。木管により第1主題が示され、弦に受け継がれ高潮していき頂点でヴァイオリンの叫び。休止の後に心の讃歌というような安らぎの旋律がハープの動きに沿って歌われます。再びアレグロに戻り全合奏の咆哮へといたります。終結部は讃歌が繰り返し力強く歌い継がれていきますが、最後は厳しいピチカートで締めくくられます。