フランツ・リスト:交響詩「前奏曲」(レ・プレリュード)

リストは1811年にハンガリーに生まれ、貴族に仕えていた両親のもと、父親の手引により幼少期より音楽的才能を現し、10歳前よりピアニストとして公開演奏を行い、パリでヴィルトーゾピアニストとして活躍、ピアノ芸術、技術を極限にまで高め、傑作、名作を世に残しています。1848年にはドイツのヴァイマール宮廷楽長に就任するとともに作曲活動を旺盛に展開します。彼はパリ時代にベルリオーズの「幻想交響曲」を知り、その華麗な管弦楽と標題との結合に感銘を受け、音楽表現としての標題を詩的観念に従って、主題を自由に変容していく単一楽章の「交響詩」というものを案出しました。彼の交響詩は13曲ありますが、最も有名なのが「前奏曲」(レ・プレリュード)です。1844年リストは「4つの元素」という男性合唱曲を作曲。その前奏曲として本曲は一旦成立しますが、彼はこの曲に適する標題をラ・マルティーヌの詩集「瞑想録」から「人生とは死への前奏曲である。」という言葉に見出し、交響詩として再創造し1854年に初演されました。 曲は4つの部分からなります。第1部は「愛」。生命の誕生のようなピチカートに始まり、第1主題が弦により柔らかく奏されます。これからの人生の行方、かつ死の暗示でしょうか、大きな流れはマエストーソになり主題の変形が低音部で力強く奏され、高弦が分散和音で鮮かに彩ります。おさまると、第二ヴァイオリンにより優しい愛の第2主題が歌われ、各楽器で愛の歌を受け継ぎつつ展開して終えます。第2部は「嵐」です。チェロが風雲急を告げ、テンポが加速、先の二つの主題の断片が奏されつつ頂点をつくりますが、オーボエによる愛の主題回顧に伴い、嵐は静まります。そして第3部は「牧歌」。ホルンの柔和なファンファーレに導かれて、田園での楽しい生活が描かれます。曲は力と速度が増して頂点へ、第4部は「戦い」高弦の激しい上下降運動にのって勇壮な金管の響き、そして弦が突進していき輝かしい行進曲が全奏されます。最後はマエストーソ。華々しいクライマックスをつくり全曲を終えます。交響詩はその後の音楽芸術に多大な影響を及ぼし、そこにもリストの偉大な貢献があったのです。