ベートーヴェン 交響曲第7番

ワーグナーが「舞踏の聖化」と評した、この第7番交響曲は、全曲一貫してリズムが鋭い生気を放ち、音楽エネルギーが放射され、聴くものの感銘を呼び起こす名作です。 
時は1809年、ナポレオン率いるフランスはオーストリアに侵攻して戦争となり、音楽どころでないウィーンで、ベートーヴェンは公私苦労を味わいつつも音楽創作的にはひとつのピークを迎えます。混乱が落ち着いた1811年には音楽意欲が更に増し、交響曲第7番の創作にかかり翌年完成、1813年に戦争交響曲と一緒に初演されると、空前の大成功をおさめます。 
 第1楽章は激しい主和音の一撃から旋律が生まれ、音楽が上昇していきます。やがてリズム動機が自然と生まれ出で、八分の六拍子の主部に突入。リズムが躍動するなか、第1主題が高らかに歌われます。続いて朗らかな第2主題が呼応するように奏され、曲は前へ前へ進みます。展開部は対位法的にすすみ、緻密な構成で興奮を呼び、終結部はうねるような低弦の上に熱狂的に広がるリズムの饗宴。 
 第2楽章は「不滅のアレグレット」として有名な楽章です。哀愁味をもつ美しい旋律が綿々と歌いつがれますが、ここでもリズムが主役です。次第に厚みをます対位旋律が聴くものの胸に迫ります。中間部は明るい幸福感。再度主題に戻り静かに終えます。  
 第3楽章はスケルツォ形式。強靭なリズムが上昇かつ下降してオーケストラが波打ちつつ前進します。2度現れる中間部は対照的な明るい牧歌、オーストリアの地方に伝わる巡礼歌の引用とも言われています。 第4楽章はまさにリズム讃歌。力強い和音に続いて第1主題が民衆の力を表すように奏され変貌していきつつ、ユーモラスな第2主題も現れます。音楽はやがて狂乱にも似た陶酔感を描き出し、壮絶な盛り上がりをみせて全曲が結ばれます。生命力にあふれた曲想が、ベートーヴェン的な緻密な構成により重厚な響きとなって輝きを放つこの交響曲は、現代でも大変人気のある交響曲です。