チャイコフスキーロメオとジュリエット

チャイコフスキーはペテルブルグ音楽院卒後、モスクワ音楽院で講師として働き始めた29歳の時、友人バラキレフのすすめで「シェイクスピアによる幻想風序曲」として、この「ロメオとジュリエット」を作曲しました。曲はソナタ形式で構成されており、主に3つのテーマが表現されています。
1:修道僧ロレンスを表す宗教的な序奏部。
2:モンタギュー家とキュピレット家が争う第1主題部。
3:ロメオとジュリエットの愛のテーマを歌う第2主題部です。 
曲は冒頭静かに修道僧ロレンスが、恋人の悲劇を回想して始まり、ハープが天国への階段のように奏されます。忍び寄る不安が高まり、家同士の抗争に突入します。激しい戦いの後に、バルコニーで歌われる二人の愛のテーマが甘美に高まっていきます。展開部は第1主題とロレンスの主題が絡み合い激しい葛藤が描かれます。ついには二人の愛が再び燃えあがり頂点へと達しますが、またも激しい抗争に巻き込まれ、二人の愛は打ち砕かれます。瀕死のジュリエットの鼓動が打楽器により奏されるなか、天国への扉が開き、ロメオは自らの命を剣で絶ち、息を吹き返したジュリエットも後を追うのです。 
チャイコフスキーの創り出した素晴らしい旋律、緊張感あふれる展開。劇的クライマックスと彼の天才的音楽性が見事に開花した初期の名作です。1870年ルビンシュタイン指揮により初演、1881年に決定稿が出版されました。