ドヴォルザーク 交響曲第8番 ト長調 作品88

ドヴォルザークの残した9曲の交響曲は彼の創作の中でも重要な存在であるばかりでなく、19世紀の国民、民族主義的な交響曲の代表作でもあり音楽史上でも重要な位置を占めています。彼の交響曲は古典作品やブラームスの創作に強い影響を受け、しっかりした構成の上に立って、豊かな旋律の魅力があふれた作品です。そして時代背景からもボヘミア、スラヴ的な色彩を濃くし、国民的感情を盛り込んだものとなっています。 ドヴォルザークは1880年代後半にプラハの近郊のヴィソカー村の自然の美しさに感動して、そこに別荘を持ち作曲活動も行うこととなりました。その自然に囲まれた生活でのインスピレーションから、1889年ドボルザーク48歳の時生まれたのがこの第8番交響曲です。曲中の旋律はどれも親しみがあり、ボヘミア自然を心から讃えるドボルザークの優しい思いが結実した傑作交響曲として、親しまれています。

 第1楽章は冒頭チェロと木管によってト短調の憂愁ある主題旋律で開始されますが、間もなく小鳥のさえずりのごとくフルートが第2主題で一気にあたりを明るくし、曲は輝かしさを増していきます。経過中低弦の行進曲風旋律をきっかけに躍動するリズムと旋律との掛けあいが楽しく展開していきます。途中の木管と弦とのやりとりはドボルザークが大好きだった、機関車の汽笛と車輪のごとくです。曲は一貫して活気を帯び、主題が緊張感をもって展開し、輝かしく終えます。  第2楽章はハ短調、弦楽器による郷愁を帯びた旋律に始まり、これに続き小鳥の鳴き声のように木管による応答があり、穏やかな頂点を築いた後に、ハ長調へと転じ、木管による優美な旋律を歌われ、独奏ヴァイオリンが吟遊詩人風に奏します。それを契機に曲は一気に熱を帯び、喜びを爆発させていきます。静まると冒頭旋律による進行の後、郷愁につつまれて静かに曲は終わります。  第3楽章はヴァイオリンにより流麗に印象的に歌いだされます。このワルツ主題が形を変えて奏された後に、木管によって明るいトリオの主題(ドヴォルザークのオペラ「頑固者たち」の転用です)で和んだのちに、冒頭に戻りワルツを再奏、最後は元気の良いクライマックス。  第4楽章は力強いトランペットに始まり、チェロが第1楽章冒頭に導かれたごとく主題を奏します。これが変奏されていき音楽は幅を広げ、田園的な香りを含みながら明るく、熱気に満ちて進みます。後半は名残を惜しむかのように主題が歌われ、静かにすすむも、最後はこれまで以上に熱狂的な全合奏によって全曲を閉じます。 この後ドヴォルザークはアメリカに渡り、さらなる音楽人生の充実、世界的音楽家への道を歩んでいきます。