ベートーヴェン 序曲「命名祝日」

2020年はベートーヴェン生誕250年記念年にあたります。
1770年12月16日にドイツのボンに生まれた、ピアニストであり作曲家であるベートーヴェンは、音楽史にとどまらず人類史上類まれなるその業績から楽聖とも称され、その影響は現在にいたるまで多大なるものがあります。今回定期演奏会では、オーケストラ音楽の基礎をつくったともいえるベートーヴェンを称え、序曲「命名祝日」を演奏いたします。
この曲はオーストリア皇帝フランツ一世(彼のためにはハイドンが有名な弦楽四重奏曲「皇帝」を献上しています。)の聖名祝日である10月4日を祝う曲として構想され、かつ1812年夏にシラーの(後に第九交響曲で知られる)「歓喜に寄す」を歌詞とする合唱付き作品として検討したものを土台にして創られた曲です。しかし、当初予定の1814年には間に合わず、1815年のクリスマスにウィーンで初演されました。 曲は冒頭、厳かな旋律とリズムで全合奏され、続いて優美なフレーズがホルンによって歌われます、これが9年後に第九の歓喜の歌のフレーズとして結実していきます。これがヴァイオリン等によって受継がれていきますが、このあたり第九の第三楽章と相似です。序奏に続き躍動するリズムに誘われ、木管楽器によって第1主題が提示されます。簡単な推移を経て、弦楽器により軽快でかつ優しい第2主題が奏されると、二つの主題が発展し、ベートーヴェンらしい音楽が生命感をもって、喜びが表現されていきます。最後は祝いの日にふさわしく華やかに締めくくられます。