サン=サーンスは父を早くに失うと、ピアニストである叔母のもとで育てられ5歳で演奏会を開くなど音楽の天才ぶりを発揮。15歳でパリ音楽院のオルガン科を卒業後、22歳でパリ、マドレーヌ教会のオルガニストの地位につきリストより「最高のオルガン奏者だ」と絶賛されています・若くして5曲ほどの交響曲を創作はしましたが、その後リストのより生み出された交響詩の世界に移り、協奏曲の秀作を生み出し、演奏家、作曲家、さらに指導者としてフランス音楽会を牽引します。交響曲第三番はサン=サーンス51歳の円熟期の代表作。ロンドンでオルガン演奏会を開き大成功をおさめた彼に、ロンドンフィルハーモニック教会より委嘱され創作されました。この交響曲の特徴として何よりオルガンを交響曲の中に組み入れ、その壮麗な響きを管弦楽と対比させて絢爛豪華な音世界を創りだしました。また二楽章ながら各楽章を二部ずつの構成とし(それゆえ通常の四楽章形式交響曲とも見えます)、一つの旋律主題が循環する形式を用いて洗練された技法により巧みにまとめられている傑作です。曲は恩人ともいえるリストを追悼し「フランツ・リストの回想のために」という献辞をつけています。
第一楽章は第一部としては、アダージョの序奏とアレグロモデラートの主部からなります。序奏は神秘的な弦と管の応答で始まり、続く主題は弦楽器によるゆらめき、これはグレゴリオ聖歌の怒りの日を変化させたもの、この主題が変形して循環主題に発展していきます。続く柔和な第二主題が弦で歌われると両者が発展してクライマックスを築いた後、徐々に静寂を取り戻し、オルガンにより導入される第二部ポーコアダージョへ。オルガン和声を背景に弦楽器による美しい旋律が奏でられます。管楽器により反復された後ヴァイオリンが主題の変奏を始めます。清浄な中でひたすら澄んだ美しい音楽が展開して終えます。 第二楽章の前半はスケルツォに相当します。情熱的な主部では弦と管の激しい対話が繰り広げられます。続くプレスト部分では木管とピアノが疾風のように駆け抜けます再度主題の対話に戻った後、2回目のプレストでは低音に新たな主題が加えられカノン風に推移、循環主題を回想して一旦静止。 オルガンの荘厳な響きにより最終章が幕開きます。荘重な主題が対位的に現れた後、オーケストラ全奏にて循環主題が高らかに歌われます。続くアレグロでは循環主題の変形と空を駆けるような旋律主題が絡み合いつつ壮大なクライマックスを築き上げていきます。オルガンとオーケストラが一体化し壮麗な音楽の伽藍を創り上げて曲を終えます。