ブラームスは1879年にブレスラウ大学より名誉博士の称号を授与されますが、その返礼として翌1880年夏にこの「大学祝典序曲」を作曲しました。いわゆる祝典儀式のためのものではなく、大学に対する、お礼と喜びの気持ちをこめて創作され、学生たちと交わった頃に覚えた楽しい学生歌を用いて自由ソナタ形式の演奏会用序曲を作曲しました。
曲はまずハ短調アレグロ、抑制的な行進曲で始まります。ブラームス特有な音楽の綾の後、トランペッをはじめとする金管により学生歌「われらは立派な校舎を建てた」が奏され、それに管弦が加わり気勢をあげ大きな行進曲を形作ります。楽しい経過の後に第2バイオリンが第2の学生歌「領主など父のごとく」(宴会などで歌われたようです)を奏され、弦の対位法が披露されつつすすみます。次にはファゴットにより、かつての大学受験ラジオ講座のテーマ曲で有名な「高い所より何かがやってくる!」が快活に歌われます。発展させた展開部では、ブラームス作曲の妙により、これまでの学生歌主題が様々姿をみせつつ高まりをみせます。最後は第4の学生歌「楽しく歌え!愉快に!」が高らかに管楽器で全奏され、曲は絢爛たる壮大さをもって力強く終えます