フランツ レハール:喜歌劇「メリーウィドウ」より「唇は黙して」
レハールは1870年ハンガリーに生まれ、父親はオーストリアの軍楽隊長をしていました。その父から音楽の手ほどきを受けた後にプラハ音楽院で学び、
父と同じく軍楽隊長を経てウィーンのアン・デア・ウィーン歌劇場の指揮者となり、30代よりオペレッタを主に作曲をはじめます。
今日誰もが知るワルツ「金と銀」で成功を収めた後に1905年この「メリーウィドウ」を世に出して当代最高のオペレッタ作曲家とされました。
「メリーウィドウ」はメイヤックの戯曲「大使館付随員」をもとに、金の威力の前には恋愛も、夫婦の節操も喜劇になってしまう(今の世相にも通じます)というものです。物語は富裕な未亡人「ハンナ」とかつて恋仲であった「ダニロ」の恋の駆け引き、それにハンナが受継いだ国家財政をゆるがすほどの膨大な遺産の行方に、国の要人夫婦の関係がからみ、すすみます。
「唇は語らず」は最終幕で、ダニロがあらためてハンナの愛の告白をし、彼女もそれに応えます、
甘美な旋律にのって二人が愛を確かめあう劇中のクライマックスで歌われます。
No.15 二重唱(ワルツ) Die lustige Witwe 唇は黙して
(Danilo)
Lippen schweigen, 'sflüstern Geigen:
Hab' mich lieb!
All' die Schritte sagen bitte,
hab' mich lieb!
Jeder Druck der Hände
deutlich mir's beschrieb
Er sagt klar, 'sist wahr, 'sist wahr,
du hast mich lieb!
(ダニロ)
唇はとざされて ヴァイオリンはささやく
「私を愛して」 と
ワルツのステップよ 言っておくれ
「私を愛して」 と
手を握りあうたび はっきりわかる
あなたの手は告げている
ほんとうに ほんとうに あなたは私を愛している
(Hanna)
Bei jedem Walzerschritt
Tanzt auch die Seele mit
Da hüpft das Herzchen klein
es klopft und pocht:
Sei mein! Sei mein!
Und der Mund er spricht kein Wort,
doch tönt es fort und immerfort:
Ich hab dich ja so lieb,
Ich hab dich lieb!
(ハンナ)
ステップを踏むたび 心も踊る
鼓動が高鳴る
「私のものになって 私のものになって」 と
唇は何も言わないけれど 耳には響く
「本当にあなたを愛している あなたを愛してる」
(Danilo, Hanna)
Jeder Druck der Hände
deutlich mir's beschrieb
Er sagt klar: 'sist wahr, 'sist wahr,
du hast mich lieb!
(ダニロ,ハンナ)
手を握りあうたび はっきりわかる
あなたの手は告げている
ほんとうに ほんとうに あなたは私を愛している!